「哀咲、」



隣からの声に、ピクッと心臓が反応する。



「テスト終わったな!」



今、隣を見たら、颯見くんはクシャッと眩しく笑ってるんだろうな、と思った。



だから私は、颯見くんを見れない。



「うん」



視線を向けないまま頷いた。



「颯見ー、聞いてくれよー」


「なぁなぁ嵐、ここ何にした?」



いつものように、颯見くんの席の周りに人が集まっていく。



私はずっと考えてる。



どうしたら、心臓が、心が、颯見くんに反応しなくなるのか。


どうしたら、颯見くんを好きじゃなくなれるのか。



だけど、全然その答えを導き出せない。



颯見くんは、二人で保健室へ行かされた日から、また私に話しかけるようになった。



話しかけられるたびに、私は鼓動を鳴らせて、好きって気持ちを上塗りされる。



好きでいたら、颯見くんを困らせてしまうのに。






「哀咲はできた? さっきのテスト」





颯見くんの声が不意に私に向いて、また鼓動が音を鳴らした。