わからない。本当に。



だけど、記憶を辿れば辿るほど、颯見の好きな人は雫なんじゃないかと思えてきて。



あたしはそれまでずっと、颯見は中雅鈴葉が好きだっていう、噂よりも確実性の高い、みんなの周知の事実みたいなものを、大前提に考えていたから。





だけど、もしその大前提が無かったら?





一年の時、クラスが離れているのに颯見がしょっちゅう十二組へ来ていたのも。



体育祭で雫にだけいちごミルク渡してたのも。



初詣のときも。

練習試合の帰りも。

クラス会も。

雫が風邪の日も。

隣の席になってからも。



思い返してみれば、颯見の行動は、雫を好きだとしか思えない。



“大前提”が無ければ、だけど。





その“大前提”は、本当に大前提なの?



誰が決めたの?
颯見が自分で言ったの?



誰もが疑わなかったそれを、あたしは疑うようになった。



あたしは雫の友達だし、希望的観測……なのかもしんないけどさ。




だって。二年で雫と同じクラスになってから、颯見、朝羽のクラスに行ったことないじゃん。


一年の時はあんなにウザいぐらい来てたのに。



休み時間、男子と話してても絶対雫に話しかけるし。



最近だって、雫は気まずくて颯見避けてるのに、あいつ、傷付いたような顔しながらめげずに雫に話しかけてる。



釘を刺したやつが、そんなことする?