消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇
 

 放課後、今度は大縄のために運動場へ集まった。


 体育委員である大西さんが仕切って、背の順に並べられ、配置が決まる。

 縄を回す二人も、縄を持って配置についた。練習が始まる。――そう思ったとき。


「私、昼休み見てたんだけどさ、ムカデ競争の人たちは、そっちの練習した方がよくない?」


 一人の女子が、そう言った。それに続いて、他の子も口々にムカデ競争が全然進んでなかったことを指摘して賛同していく。

 そんなクラスメートの意見に押され、大西さんはしぶしぶといった表情で承諾した。


 がんばってねー、なんて声を背中に受けながら、大縄の列から離れていく。

 大西さんがムカデ競争の板を持ってきて、また、昼休みと同じ順番に並んだ。


 板に足をくくり付けて、前の佐藤さんの肩に手を置く。

 佐藤さんは膝を怪我しているんだし、今度は絶対に、私だけでも倒れないようにしなきゃ。


「佐藤、膝大丈夫?」


「うん。ガーゼしてるから転んでも当たらないし」


 オッケー、という大西さんの返事の後に、寺泉さんが合図をして、また練習が始まる。

 いち、に、と掛け声を掛けながら、足を前に出す。


 絶対に、倒れちゃ駄目。倒れちゃ駄目。

 そう思っていても上手くはいかないもので。

 五歩目の手前まできて、あ、という誰かの声の後、足が止まってバランスが崩れた。


 前に倒れちゃ駄目。そう思った反動で、きゃー、とみんなが倒れていくなか後ろに尻餅をつく。

 少なくとも、前に倒れて、怪我をしている佐藤さんに乗るようなことにはならなかった。


 そうして練習は何度も繰り返され、何度もバランスを崩しては尻餅をつく。

 結局五歩以上進むことができずに練習時間が終わってしまった。