気がつけばあの日から、もう一週間が経っていた。



私から事情を聞いた倖子ちゃんは、鈴葉ちゃんにはより一層、さらに颯見くんにまで敵意を向けるようになってしまった。



だけど、まだ私の心は颯見くんを好きなままで、声を聞けば胸が高鳴るし、授業中は隣を意識してしまう。



それを押し込めて、自分で知らないふりをして、一日が終わる。



あれから颯見くんも、たぶん私とは気まずくて、目も合わなくなった。



最近、夜は、あの日のことを思い出して、考えたくないのに胸が苦しくて、ちゃんと眠れない。



「最近身だしなみの乱れが目立つぞー。ほら山崎、第二ボタンは閉めろ」



終わりのホームルームの時間。


太吉先生の声が、働かない思考の裏を流れていく。



「えーなんだよ今まで見逃してくれてたじゃん」


「いや、俺は断じて見逃してなんかいない。教頭に言われたから注意しだしたわけじゃないぞ」


「あー……教頭に言われたんすね」



どわっと笑い声が広がる中で、颯見くんも楽しそうに笑っているのを視界の端で捉えた。



心臓がぎゅっと鷲掴みにされたみたいに苦しくなる。



「なんでもいいけど第二ボタン閉めろ」



腕を組む太吉先生の姿が、少し歪んで見えた。



今はだめ。学校では溢れてこないで。


家に帰ってから、また思う存分泣けばいいから。



目に溜まって揺れる水を、引っ込ませようと瞬きする。



ぎゅうっと抉られるような心臓の痛みを、押さえ込んで、気づかないふりをして、涙を引かせることに集中する。