消極的に一直線。【完】

「今日は練習これぐらいにしない? あたし午後の授業始まる前に化粧直ししたいしさ」


 寺泉さんの一言に、大西さんと笹野さんが頷いた。

 ありがとう、と佐藤さんが少し安心したような表情を見せて、足の紐をほどいた。

 自分も足の紐をほどきながら、大西さんと笹野さんに連れられて保健室へ向かう佐藤さんの姿を見送る。


 どうしよう、謝るのなら、保健室から帰ってからの方がいいのかな。

 楽しそうに話している三人を見ていると、その中に入ってはいけないような、そんな気がした。


 紐をほどききって乗っていた板から降りると、寺泉さんがサッと板に手を伸ばした。

 その一瞬。寺泉さんの手に血が滲んでいた気がした。
 

 驚いてその手をよく見ようとするけれど、寺泉さんは何も言わずに板を持ち上げて、手の傷がよく見えなくなってしまう。

 そのまま校舎の方へと向かっていく寺泉さんを、ただ見つめる。


 寺泉さんも、怪我したのかな。きっとあれは、怪我をしていたのだと思う。

 私はしばらく時間を置いてから、保健室へと向かった。