「……え、」


「あぁ」



朝、玄関を出ると、いつも「おはよー」と明るい笑顔で出迎えてくれる吉澄さんはいなかった。



吉澄さんだけじゃなくて、西盛くんと洲刈くんもいない。



そこには、真内くんが一人。

いつかの放課後の時みたいに、立っていた。



「え、と、」


「あの男、捕まった」



カタコトの日本語みたいに、単語を落とす真内くん。



あの男って誰だろう。


少し考えて、もしかして私に刃物を向けてきた人のことかな、と理解する。



「登下校、もう一人でも大丈夫だ」



低く響いたその言葉が、ポトンと胸に落ちた。



ああ、そっか。


もう危険じゃなくなったから、これからは、また一人になるんだ。



いつもいつも、遠回りなのに、私の家まで来てくれていたんだから、皆んなにとって、こうなって良かったんだ。







そう自分を納得させて、小さく頷いた。