「っ、」



颯見くんが音にならない声を出して、繋がっていた視線をスッと振り払い、視線をプリントに落とした。



「……プリント、教えて」



そう言って、髪に当てていた手を下ろし、シャーペンを掴む颯見くん。



「あ……うん」



たった一瞬のその颯見くんの仕草が、彼の気持ちを代弁しているようだった。



困惑、させてる。





「えっと、この問題は―――」



いやに響く鼓動の音に知らないフリをして、問題の解き方を説明する。



「これとこれが同じだから、こうなって――」



プリントの上でシャーペンを滑らせ、数字を書いて説明しながら、思考が考えたくないものに支配されていく。