「……よかった」



降ってきた声が、なんだか独り言みたいに、吐息混じりに聞こえて、そっと視線を上げた。



視界に映ったのは、片手を髪にクシャッと当てて、整った顔が半分隠れた颯見くん。



見えている方の目は、何を見るでもなく、私の斜め下に当てられている。



目が合わないのをいいことに、その伏せ目がちな綺麗な目を、吸い寄せられるように見つめた。



睫毛、長いんだなぁ。



透き通った薄茶の瞳が、ゆっくりと焦点を動かす。



吸い込まれるようにそれを見つめていた私と、その綺麗な瞳の見る先が、ぱっちり合わさった。



トクン、と脈が動きを変えて、心臓が跳ねる。



目のそらせどきがわからなくなって、脈が加速していく。