中庭の桜の木を彩っていた桃色が散り、鮮やかな緑が覆い尽くす。



まだ肌寒さのあった四月は終わり、五月になっていた。




「あと二週間で中間テストかぁ」



はあ、と倖子ちゃんがため息をついて、食べ終わったお弁当を重ねた。



「てか中雅鈴葉、ほんとに真内に乗り換えたのかな、しょっちゅう昼休み話しかけにくるじゃん」


「ほんとだね」



窓から風が吹き抜けて、体に刺さる。


なんだか今日の風は、体に厳しい。





「……ねぇ雫、全然弁当進んでないよ」



言われて、ひとつの卵焼きを、もう何十分もお箸に掴んだままであることに気が付いた。