自分の席にたどり着いて椅子に座ると、「おかえり」と颯見くんが笑った。

 ただいまと言うべきなのかな、なんて考えていたら、朝羽くんの視線がこちらに向く。


「哀咲さんって鈴葉とも知り合いだったんだね。昨日鈴葉から聞いてびっくりしたよ」


「あ……」


 そうか、朝羽くんや颯見くんは、私が鈴葉ちゃんと中学時代同じ塾で仲が良かったこと、知らなかったんだ。


「鈴葉ってほんと誰とでも仲良くなるよなぁ」


 朝羽くんは感心したように言って、「ところでさ、」と付け加える。


「哀咲さんは寺泉さんのことどう思う? 寺泉さん、鈴葉を見かけるたび鈴葉に嫌な態度取るんだ」


 唐突な話題に一瞬頭がついていけなくて、返事も思いつかず固まった。


「僕が寺泉さんに言い返そうとすると、逆に鈴葉が寺泉さんのこと庇う。いっつもだよ。どう思う?」


「カズは心配症なんだよ。鈴葉が寺泉を庇うなら何も気にしなくていいんだって」


 なぁ?、と颯見くんに視線を向けられて、頷いていいかわからず、えっと、と言葉を濁す。


「そんなこと言ってさ、いざって時鈴葉を助けるのは嵐だもんな。ずるいよ」


 朝羽くんは、ため息と一緒にポツリと言葉をこぼした。見ると、その瞳が少し切ない。