教室に入ると、大西さん、笹野さん、佐藤さんが、駆け寄ってきた。



「寺泉、哀咲さん、また同じクラスだね!」

「またよろしくね!」

「よろしく!」



嬉しそうにはしゃぐ三人。



こんな風に、同じクラスで喜ばれることなんて、今まで一度もなかったのに。



ほらまた一つ。
ずっと夢見ていたことが、現実になった。



「よ、よろしくね」



言い終えてふっと息を吐く。



「あれ、あいつ、テーブルゲーム部の?」



倖子ちゃんに言われて視線の先をたどると、窓際からニ列目の一番前の席で本を広げる真内くんの姿。



「あ、真内くんカッコいいよね!」


「真内くんと同じクラスだなんてラッキー!」


「んー、あたしはタイプじゃないかな」



大西さん達が楽しそうに会話する。



真内くんには、バレンタインにあんなに助けてもらったのに、まだちゃんとお礼が言えていない。



部活や登下校では毎日会うけれど、吉澄さん達の前で、その話をしていいのか迷っていた。



ううん、そうではなくて、ただ単に、緊張してお礼が言えていないだけなんだと思う。



ちゃんと、お礼言わなくちゃ。