(嵐side)
「ちょっと颯見くん! そういうのはみんなの前で言うことじゃないでしょ」
「哀咲さん可哀想だよ」
保健室からふらりと出て行った哀咲を追いかけようとしたら、クラスの女子達に止められた。
「雫はあたしが追いかけるから。颯見、後でちゃんと説明してよ」
そう言って寺泉が保健室を出ていく。
もう、何なんだよ。俺は哀咲と話がしたい。哀咲が俺のことを好きだと言ってくれて、やっと想いが通じたはずなのに。
「てか颯見って中雅さんと付き合ってんじゃねーの?」
吉田が俺の座っているベッドの横にポスンと座った。
「……お前も誤解してんのかよ」
哀咲も鈴葉と俺の関係を勘違いしてるみたいだったし。
「誤解なのか?」
「完全に誤解」
――私、嵐のことが好き
鈴葉に言われた言葉が脳内で反響する。
言われるまで、少しも気付かなかった。鈴葉は、バレてると思ってたみたいだけど。
鈴葉と気まずくなった日、俺は哀咲に告白して失恋して、やさぐれてたからたぶんキツい言葉を言ったと思う。
――雫ちゃんのことばっかりだね!
そう言われて、自分の気持ちがバレたことを悟った。
自分の気持ちがバレて気まずくて、早く元のように戻るキッカケが欲しいとは思っていたけど。
まさか、告白されるとは思わなかった。
だけど、あの時の鈴葉の顔。望んでいたことは、俺と同じだとわかった。
――これからも普通に接してよ
今も昔も、俺にとっての鈴葉は。
これからの、鈴葉にとっての俺は。
「大切な幼なじみだよ」
「好きかと思ってた」
「家族愛だな」
「ふーん、そっか」
すんなりと受け入れた吉田は、ゴロン、と上半身を倒してベッドに寝転んだ。
さっきはそこに哀咲がいたのになぁ、と少し吉田を恨めしく思う。
「ねーねー、いつから哀咲さんのこと好きだったの?」
さっきはあんなに俺を責めていた女子が、もう楽しそうにその話題に乗ってきた。
違うんだよ、俺はこんな風に話題にされたくて、あんなことを言ったんじゃない。
「そういうことは哀咲にだけ伝わればいいから。他の奴には言わない」
言うと、女子達がきゃーっと声をあげてはしゃぎだした。
あーもう違う、そうじゃない。
今になって、クラスの奴らの前で告白したことを後悔する。
「哀咲さんかー。意外だなー」
「颯見、俺協力しようか?」
「あ、俺も! 颯見の為なら」
「あ! あたしもあたしも!」
あーあ。本当にこいつらの前で言うんじゃなかった。
わらわらと降りかかってくる声を振り落とすように、勢いよくベッドから立ち上がった。
一瞬にして、賑やかさが止まる。
「慎重に進めたいんだよ! だから協力はいらない! 黙って見てて」
言うと、寝転んでいた吉田がバサっと体を起こした。
「……颯見カッケー」
「やばい、惚れる」
「ひゅーひゅー」
「応援してっぞー」
あーもうなんでこうなんだよ。
はぁ、と重いため息を吐いて、ベッドに腰を落とした。
「てかさぁ、颯見」
吉田が呟く。
「さっき、俺ら哀咲さんに悪いことしたよな」
こめかみを人差し指でポリポリ掻きながら、ばつが悪そうに顔を向ける。
「悪いと思うなら、本人に謝れよ」
「そう……だよ、な……!」
吉田が顔を上げて立ち上がった。
「俺、謝ってくる」
「え、」
「あ、俺も」
「俺も謝りに行く」
さっき哀咲をからかった男子が立ち上がって、吉田の後に続いて保健室を出て行く。
「あ、ちょっと!」
俺の方が哀咲と話したいのに。行けなくなったじゃねーかよ。本人に謝れ、なんて言い出した数秒前の自分が憎い。
早く、哀咲と話がしたい。
まだ信じられない。
俺が前に告ったときは、あんなにショック受けたような顔で泣かれて。あれから、一ヶ月ほどしか経ってねーのに。
本当に俺、好きって言われたんだよな?
早く。早く、確かめたい。
じゃねーと、全部幻だったって、夢だって、嘘だって、言われてしまいそうだ。
“あの子の瞳に俺を映したい”
数年前に抱いた望みなんかじゃ、もう足りねーんだよ。
花火合戦で、哀咲にもう一回告白しよう。今度こそ、間違いなく俺の気持ちが届くように。
ずっとずっと、抱いていたこの気持ちを――。
(嵐side end)
「ちょっと颯見くん! そういうのはみんなの前で言うことじゃないでしょ」
「哀咲さん可哀想だよ」
保健室からふらりと出て行った哀咲を追いかけようとしたら、クラスの女子達に止められた。
「雫はあたしが追いかけるから。颯見、後でちゃんと説明してよ」
そう言って寺泉が保健室を出ていく。
もう、何なんだよ。俺は哀咲と話がしたい。哀咲が俺のことを好きだと言ってくれて、やっと想いが通じたはずなのに。
「てか颯見って中雅さんと付き合ってんじゃねーの?」
吉田が俺の座っているベッドの横にポスンと座った。
「……お前も誤解してんのかよ」
哀咲も鈴葉と俺の関係を勘違いしてるみたいだったし。
「誤解なのか?」
「完全に誤解」
――私、嵐のことが好き
鈴葉に言われた言葉が脳内で反響する。
言われるまで、少しも気付かなかった。鈴葉は、バレてると思ってたみたいだけど。
鈴葉と気まずくなった日、俺は哀咲に告白して失恋して、やさぐれてたからたぶんキツい言葉を言ったと思う。
――雫ちゃんのことばっかりだね!
そう言われて、自分の気持ちがバレたことを悟った。
自分の気持ちがバレて気まずくて、早く元のように戻るキッカケが欲しいとは思っていたけど。
まさか、告白されるとは思わなかった。
だけど、あの時の鈴葉の顔。望んでいたことは、俺と同じだとわかった。
――これからも普通に接してよ
今も昔も、俺にとっての鈴葉は。
これからの、鈴葉にとっての俺は。
「大切な幼なじみだよ」
「好きかと思ってた」
「家族愛だな」
「ふーん、そっか」
すんなりと受け入れた吉田は、ゴロン、と上半身を倒してベッドに寝転んだ。
さっきはそこに哀咲がいたのになぁ、と少し吉田を恨めしく思う。
「ねーねー、いつから哀咲さんのこと好きだったの?」
さっきはあんなに俺を責めていた女子が、もう楽しそうにその話題に乗ってきた。
違うんだよ、俺はこんな風に話題にされたくて、あんなことを言ったんじゃない。
「そういうことは哀咲にだけ伝わればいいから。他の奴には言わない」
言うと、女子達がきゃーっと声をあげてはしゃぎだした。
あーもう違う、そうじゃない。
今になって、クラスの奴らの前で告白したことを後悔する。
「哀咲さんかー。意外だなー」
「颯見、俺協力しようか?」
「あ、俺も! 颯見の為なら」
「あ! あたしもあたしも!」
あーあ。本当にこいつらの前で言うんじゃなかった。
わらわらと降りかかってくる声を振り落とすように、勢いよくベッドから立ち上がった。
一瞬にして、賑やかさが止まる。
「慎重に進めたいんだよ! だから協力はいらない! 黙って見てて」
言うと、寝転んでいた吉田がバサっと体を起こした。
「……颯見カッケー」
「やばい、惚れる」
「ひゅーひゅー」
「応援してっぞー」
あーもうなんでこうなんだよ。
はぁ、と重いため息を吐いて、ベッドに腰を落とした。
「てかさぁ、颯見」
吉田が呟く。
「さっき、俺ら哀咲さんに悪いことしたよな」
こめかみを人差し指でポリポリ掻きながら、ばつが悪そうに顔を向ける。
「悪いと思うなら、本人に謝れよ」
「そう……だよ、な……!」
吉田が顔を上げて立ち上がった。
「俺、謝ってくる」
「え、」
「あ、俺も」
「俺も謝りに行く」
さっき哀咲をからかった男子が立ち上がって、吉田の後に続いて保健室を出て行く。
「あ、ちょっと!」
俺の方が哀咲と話したいのに。行けなくなったじゃねーかよ。本人に謝れ、なんて言い出した数秒前の自分が憎い。
早く、哀咲と話がしたい。
まだ信じられない。
俺が前に告ったときは、あんなにショック受けたような顔で泣かれて。あれから、一ヶ月ほどしか経ってねーのに。
本当に俺、好きって言われたんだよな?
早く。早く、確かめたい。
じゃねーと、全部幻だったって、夢だって、嘘だって、言われてしまいそうだ。
“あの子の瞳に俺を映したい”
数年前に抱いた望みなんかじゃ、もう足りねーんだよ。
花火合戦で、哀咲にもう一回告白しよう。今度こそ、間違いなく俺の気持ちが届くように。
ずっとずっと、抱いていたこの気持ちを――。
(嵐side end)
