第17章 呼び出し
張り詰めた空気を感じながら、書き終えた解答用紙と問題用紙を交互に見つめる。
期末テスト最終日。最後の科目の英語。
残り時間を最終見直しにあてながら、教室に広がるシャーペンの音と、窓の外から聞こえる蝉の声を聞いた。
もう七月も半ばを過ぎ、今日テストが終わって、そのあと一週間学校に行ったら、終業式。夏休みが始まる。季節は完全に夏になっていた。
颯見くんが私に、鈴葉ちゃんを好きだと宣言した日から、どれくらい経ったんだろう。
解答用紙の半分くらいまで見直したところで、静かな教室にチャイムが鳴り響いた。
「はい、そこまで。解答用紙裏返したまま前にまわしてー」
ざわざわと教室が騒がしくなる。
言われた通り解答用紙を裏返して、前の席の倖子ちゃんに渡すと、「終わったねー」と振り返りながらそれを受け取ってくれた。
「哀咲、」
隣からの声に、ピクッと心臓が反応する。
「やっとテスト終わったな!」
今、隣を見たら、颯見くんはクシャッと眩しく笑ってるんだろうな、と思った。
だから私は、颯見くんを見れない。
「うん」
視線を向けないまま頷いた。
「颯見ー、聞いてくれよー」
「なぁなぁ嵐、ここ何にした?」
いつものように、颯見くんの席の周りに人が集まっていく。
私はずっと考えてる。どうしたら、心臓が、心が、颯見くんに反応しなくなるのか。どうしたら、颯見くんを好きじゃなくなれるのか。
だけど、全然その答えを導き出せない。
颯見くんと保健室へ行った日から、颯見くんはまた私に話しかけるようになった。
話しかけられるたびに、私は鼓動を鳴らせて、好きって気持ちを上塗りされる。
好きでいたら、颯見くんを困らせてしまうのに。
「哀咲はできた? さっきのテスト」
颯見くんの声がまた私に向いて、鼓動が音を鳴らした。
「え、なに颯見、雫と競おうっての?」
私が返事をする前に、倖子ちゃんが振り返って颯見くんに答えた。
「ちげーよ、そうじゃなくて……聞いてみただけ」
颯見くんの声が倖子ちゃんに向けて飛んでくる。
「ふーん」
倖子ちゃんは私の左隣の颯見くんに目を向けながら、何か考え込むように答えた。
倖子ちゃんの颯見くんへの敵対視は、保健室に行ったあの日から、なぜか少し和らいだ。
あの日、何かあったのか、いや何もなかったはずだけど、何かを思ったのか、どうなのか、私にはその理由が全くわからない。
だけど、罪悪感を抱いていた私の心は、そのことでだいぶ救われている。
「あ、中雅鈴葉」
倖子ちゃんの視線が、私の後ろに向いた。
その名前に、ハッと息を吸う。
「雫ちゃん、」
後ろから、私を呼ぶ、透き通った声。
ドクンと心臓が揺れる。
鈴葉ちゃんがこのクラスに来たのは久しぶりだ。
「少し話したいんだけど、いいかな?」
ゆっくり振り返ると、鈴葉ちゃんがドアから顔を覗かせてふわっと笑った。
サラサラの黒髪が風に揺れて、その白い肌に掛かる。綺麗で、非の打ち所がない。
「二人きりで話したいんだけど……駄目?」
私が返事を返さないから、鈴葉ちゃんが心配そうに付け加えた。
二人きりで話したいことって何なんだろう。
考えてみたら、嫌な予感しかない。
「雫、行ってきたら?」
渦巻く不安思考を、倖子ちゃんが遮った。
「あたし教室で待ってるから終わったら戻ってきな」
ポン、と肩を叩かれる。
何だか「後で話を聞いてあげるよ」って言ってくれてる気がした。
不安な気持ちが軽くなって鈴葉ちゃんを見る。
「いいよ」
言うと、鈴葉ちゃんは優しく笑った。
張り詰めた空気を感じながら、書き終えた解答用紙と問題用紙を交互に見つめる。
期末テスト最終日。最後の科目の英語。
残り時間を最終見直しにあてながら、教室に広がるシャーペンの音と、窓の外から聞こえる蝉の声を聞いた。
もう七月も半ばを過ぎ、今日テストが終わって、そのあと一週間学校に行ったら、終業式。夏休みが始まる。季節は完全に夏になっていた。
颯見くんが私に、鈴葉ちゃんを好きだと宣言した日から、どれくらい経ったんだろう。
解答用紙の半分くらいまで見直したところで、静かな教室にチャイムが鳴り響いた。
「はい、そこまで。解答用紙裏返したまま前にまわしてー」
ざわざわと教室が騒がしくなる。
言われた通り解答用紙を裏返して、前の席の倖子ちゃんに渡すと、「終わったねー」と振り返りながらそれを受け取ってくれた。
「哀咲、」
隣からの声に、ピクッと心臓が反応する。
「やっとテスト終わったな!」
今、隣を見たら、颯見くんはクシャッと眩しく笑ってるんだろうな、と思った。
だから私は、颯見くんを見れない。
「うん」
視線を向けないまま頷いた。
「颯見ー、聞いてくれよー」
「なぁなぁ嵐、ここ何にした?」
いつものように、颯見くんの席の周りに人が集まっていく。
私はずっと考えてる。どうしたら、心臓が、心が、颯見くんに反応しなくなるのか。どうしたら、颯見くんを好きじゃなくなれるのか。
だけど、全然その答えを導き出せない。
颯見くんと保健室へ行った日から、颯見くんはまた私に話しかけるようになった。
話しかけられるたびに、私は鼓動を鳴らせて、好きって気持ちを上塗りされる。
好きでいたら、颯見くんを困らせてしまうのに。
「哀咲はできた? さっきのテスト」
颯見くんの声がまた私に向いて、鼓動が音を鳴らした。
「え、なに颯見、雫と競おうっての?」
私が返事をする前に、倖子ちゃんが振り返って颯見くんに答えた。
「ちげーよ、そうじゃなくて……聞いてみただけ」
颯見くんの声が倖子ちゃんに向けて飛んでくる。
「ふーん」
倖子ちゃんは私の左隣の颯見くんに目を向けながら、何か考え込むように答えた。
倖子ちゃんの颯見くんへの敵対視は、保健室に行ったあの日から、なぜか少し和らいだ。
あの日、何かあったのか、いや何もなかったはずだけど、何かを思ったのか、どうなのか、私にはその理由が全くわからない。
だけど、罪悪感を抱いていた私の心は、そのことでだいぶ救われている。
「あ、中雅鈴葉」
倖子ちゃんの視線が、私の後ろに向いた。
その名前に、ハッと息を吸う。
「雫ちゃん、」
後ろから、私を呼ぶ、透き通った声。
ドクンと心臓が揺れる。
鈴葉ちゃんがこのクラスに来たのは久しぶりだ。
「少し話したいんだけど、いいかな?」
ゆっくり振り返ると、鈴葉ちゃんがドアから顔を覗かせてふわっと笑った。
サラサラの黒髪が風に揺れて、その白い肌に掛かる。綺麗で、非の打ち所がない。
「二人きりで話したいんだけど……駄目?」
私が返事を返さないから、鈴葉ちゃんが心配そうに付け加えた。
二人きりで話したいことって何なんだろう。
考えてみたら、嫌な予感しかない。
「雫、行ってきたら?」
渦巻く不安思考を、倖子ちゃんが遮った。
「あたし教室で待ってるから終わったら戻ってきな」
ポン、と肩を叩かれる。
何だか「後で話を聞いてあげるよ」って言ってくれてる気がした。
不安な気持ちが軽くなって鈴葉ちゃんを見る。
「いいよ」
言うと、鈴葉ちゃんは優しく笑った。
