グラウンドに着くと、制服を着た観覧者達がグラウンド前の階段にずらりと並んで座っていて、ソワソワした空気が漂っていた。



見た感じ、五十人以上はいると思う。



私たちの学校の制服を着た人が多くを占めていたけれど、たぶん試合相手の学校であろう制服の人も三割ぐらいいて、それ以外にも、見たことない制服の人がちらほら見える。



想像していたよりも、たくさんの人が観に来るんだということに驚いた。



「あそこに座ろ」



倖子ちゃんが、ちょうど空いていた階段の端の方を指差して、私の返事を聞く間もなく、歩いていく。



その後をついていきながら、吉澄さん達のことが気になって後ろを振り返ると、四人はもう別の場所に座っていた。



階段の砂埃を払って、そこにタオルが敷かれる。



「これで制服汚れないでしょ」



倖子ちゃんがそう言って、タオルの半分に腰かけた。



視線で隣に座るように促される。



「あ、ありがとう」



タオルの残り半分空いたスペースの上に遠慮気味にお尻を置いた。



「それにしても、さっすが。女子ばっかじゃん」



言われて見渡してみると、その通り、大半が女の子で、少し色めきだった空気を醸し出している。



「誰が目当てなんだろうね。颯見かな」



ちらっと倖子ちゃんの視線を感じて、ドキっと鼓動が反応した。



やっぱり颯見くんは、そういう、恋愛的な意味でも、人気があるんだ。



「みんなすごいねー。あ、ほら、あそこなんか横断幕掲げてるし」



倖子ちゃんが指差した方に視線を向けてみると、『朝羽くんファイト』と書かれた大きな横断幕。



五人の女の子が嬉しそうにそれを広げて持っている。



「朝羽も人気あるよねー」



太ももに肘をついて、頬杖をつきながら、倖子ちゃんが呟いた。



同じクラスの、斜め前の席の朝羽くんが、こんな風に、知らない女の子に横断幕まで作られているのを見ると、なんだか不思議な気分になる。



きっとこの中に、颯見くんを観に来た人もたくさんいるんだ。



そう思うと、なんだか、ぐるりと得体のしれないものが身体の奥で疼いた。