「哀咲さんって、颯見くんのこと、好きなの?」


「え?」



どうして。今、気付かれてしまったんだろう。



ドクドクと心臓が音をたてる。



そういえば、倖子ちゃんにも先に気づかれていたし、もしかしたら私は、すごくわかりやすいのかもしれない。



私は、颯見くんのことが好き。


だけど、吉澄さんにそれを知られるのは、何となく恥ずかしくて、頷けない。



「やっぱり、颯見くんのこと、好きなんだ!」



肯定はしていないはずなのに、確信したように叫ばれてしまった。



恥ずかしい。
すごく、恥ずかしい。



「颯見かぁ、確かにかっこいいよな。モテるし」



バリバリとポテトチップスを頬張りながら、西盛くんが呟く。



「人気者だしな。でも颯見って中雅さんが好きなんじゃ……」


「おい重太、それは言うな。そうと決まったわけじゃないし」


「そうだよ重太! デリカシーがないよ」


「……ごめん」



真内くん以外の会話が、私を置いて、織りなされていく。



「哀咲さん」



吉澄さんが、真剣な表情で、私の方に向き直った。



「私、哀咲さんの恋に協力する!」



パシッと。力強く、両手を握られた。



協力……?



頭脳がそれを理解するのに、少し時間がかかるようで。


私はただ、その真剣な表情を見つめ返すことしかできない。



「今度の日曜日、サッカー部の練習試合があるんだって」



そんな私に構わず、言葉を続ける吉澄さん。



「練習試合、見に行ってみたらどうかな?」



協力というものと、練習試合を見に行くという提案が、どう結びつくのかは理解できなかったけれど。



サッカーの試合をしてる颯見くんを、見たい。



気が付いたら、私は頷いていた。