どこに行くのか、なんとなく不安がよぎったけれど、黙ってその後ろをついていく。



坂を最後まで下って、まっすぐ。
大通りに出る前に、細い路地に入った。



ついていきながら、なんだか、得体のしれない不安がまとっていく。



細くて、狭い、この道は、ほとんど人が通らない。


この道の先にあったのは、誰も利用することのなくなった、小さな公園。



周りは木に囲まれていて、人の目が届かないから、その公園は危ない人たちの溜まり場だ、ってお母さんが言っていた。



ザッザッと静かな足音が、不気味なほど規則正しく刻まれる。


それに呼応するように、鼓動が、嫌な余韻を残して、耳に響く。



少し、こわいかもしれない。

やっぱり、勇気を振り絞ってでも、断るべきだったのかもしれない。



後悔と不安を渦巻かせながら、それでもまだ、やっぱりいいですと断りの言葉を言う勇気が持てなくて、震える足を進ませた。



ザッと、靴で雪が浅く沈む音が静かに鳴って、前を歩く男の人が、立ち止まった。



少しさびれた二つのブランコと、赤いスプレーで汚れた滑り台。


それ以外は何もない、妙に静かで薄暗い公園。



頭で理解するよりも早く、身体の温度が引いた。



全身が震える。





「案外チョロいな」



前に立つ男の人が、振り向いて、やんわりと笑った。



頭の中で第六感が警鐘を鳴らす。



「俺と俺の組織を嗅ぎ回ってたの気付いてたぜ」



そう言って、男の人が胸ポケットに手を入れる。



そこからゆっくりと引き抜かれて姿を現したのは、キラリと光に反射する鋭いダガーナイフ。



それを目に捉えた瞬間、は、と息が詰まって呼吸が止まった。



心臓が押し寄せるように鼓動を早める。



身体が石のように固まって、動かない。



思考が働いてくれない。







「悪いけど死んでもらうよ」







ころ、され、る。



全身から冷たい汗が滲んだのがわかった。



遠くの方で、耳鳴りがする。



ああ、もう。