試合のこと訊いてみようかな。いつやるのか、とか、どこでやってるのか、とか。

 観に行ってもいいか、なんて聞くのはさすがに、気持ちに気づかれてしまいそうで、できない。


「はい、嵐。電子辞書。もう忘れんなよ」


 朝羽くんが電子辞書を颯見くんに渡すのを眺めながら、高まる緊張に拳を握りしめる。


「あのっ……」


 声を絞り出すと、颯見くんの優しい視線が向けられた。


「ん?」


 柔らかい声に、緊張とは違う鼓動の音が鳴る。


「サッカー部の試合……」


 脈の鳴る音を聞きながら、そう言いかけて、ハッと止めた。