「哀咲さんは誰がイケメンだって思う? うちの銀もイケメンだけど、やっぱり運動部がカッコいいよねー!」


 そう話す吉澄さんの目がキラキラと輝いている。
 

「科学研究部の部室の窓から、サッカー部と野球部の練習がすごくよく見えるの。だからかな。サッカー部と野球部が一番かっこよく見えちゃう」


 うっとりするような顔で両手を拝むように顔の前で組んで、甘い息を吐く吉澄さん。

 どう反応すればいいかわからないまま、彼女の話は続いていく。


「野球部だったら、加藤くんだよね! あの焼けた肌に、白い葉を見せる笑顔が素敵で……。堅物な感じもたまらないよね」


 野球部の加藤くんという男子のことはよく知らないけれど、きっと余程素敵な人なんだろうな。

 瞳をキラキラさせる彼女の顔を見ながら、そう思う。


「あとは、サッカー部だったらやっぱり不動の二人! 朝羽くんと颯見くんだよね!」


 その名前が聞こえた瞬間。ピクッと心臓が跳ねた。


「だけどあの二人にはマネージャーの中雅鈴葉さんがいるからなー。幼なじみらしいし、私たちには手が届かないよね」


 ドクドク、とまた鼓動が揺れる。


 みんな、やっぱり知っているんだ。颯見くんは鈴葉ちゃんが好きで、私たちには手が届かない存在。割って入ってはいけないって。みんなわきまえてる。

 それなのに、私は――。