もしかしたら。

もしかしなくても、私は、このまま、颯見くんと二人で、新年を迎えることができるのかな。



私がこんな場所に抜け出してきてしまったせいで。

颯見くんはきっと鈴葉ちゃんたちと迎えたかったはずで。



すごく申し訳ないことのはずなのに、勝手だけど、すごく、嬉しい。



三、二、一、と聞こえて、ゴーンとお寺の鐘の音が鳴り響いた。



新しい年が、始まった。






ここは、すごく静かなのに、神社の表から、いっそう賑やかな声が聞こえてくる。



「哀咲、」



颯見くんが、いつもの優しい声で、私の名前を呼んだ。



「あけましておめでとう」



降ってくる声に、胸の奥が熱くなる。



顔を向けると、颯見くんは、やっぱりくしゃっと笑っていて、トクンと胸の奥が音を鳴らした。



「あ、あけまして、おめでとう」


「うん。今年もよろしくな」



颯見くんは笑って、スッと立ち上がった。



「行こう」



颯見くんに言われて、私も慌てて立ち上がった。



鈴葉ちゃんたちはきっとまだ心配してる。



私の気持ちを知っている倖子ちゃんは、たぶん、一番心配しているかもしれない。



鈴葉ちゃん達のところへ戻って、颯見くんと鈴葉ちゃんが二人の世界で話しても、もう、私は何も思っちゃいけない。



新年の始まりを、颯見くんと二人で迎えてしまった。


本当は鈴葉ちゃんと迎えたかったはずの新年を、私と迎えてくれた。



雑草の擦れる音をたてながら、前を歩く颯見くんの背中を見ると、すごく、胸が苦しくなった。