「自己紹介は以上かな。あ、哀咲さんの自己紹介は、もう皆んなわかってるから大丈夫だよ。哀咲雫さん、一年十二組だよね! 喋るのが苦手、かな?」


 吉澄さんがぴょこんと跳ねて笑う。

 私のこと調べたって言っていたけど、話すのが苦手なことまで知られているとは思わなかった。

 驚いていると、吉澄さんはさらに話を続ける。


「あのね、哀咲さん、この前、私の落とし物を届けてくれたでしょ? あれにはちょっとした化学物質が入っていて、長く身につけていると身体に影響があるかもしれないの」


 衝撃的な発言続きで、思考が追いつかない。驚いたまま、吉澄さんを見つめると、彼女はまるで私を落ち着けるかのように柔らかく笑った。


「そんなに心配しなくて大丈夫。数ヶ月も身につけてないでしょ? ただ、哀咲さんの身体に何も影響が及んでなかったと判明するまで、科学研究部にいてほしいの」


 そういう事だったのか、と妙に納得して、思考がまとまらないまま頷く。

 私のことを心配してくれている、ってことだよね。


「あと、何かあった時のために、登下校もそばに居させてほしいの。いいかな?」


 可愛らしく首を傾げる吉澄さんに、コクリと頷くと、パァッと花が咲いたように彼女が笑った。


「良かった! ありがとう!」


 嬉しそうに叫んだ彼女の小柄な体が勢いよく抱きついてきて、思わず体が固まった。