じゃり、じゃり、と神社の表まで来て、鈴葉ちゃんたちの姿を探していたら、「こっち」と颯見くんに誘導された。


 もうすぐ、鈴葉ちゃんたちの元に戻る。それを寂しく思うなんて、私はほんとに厚かましい。


 鼓動の音を聞きながら歩いていると、じゃり、と音をたてて、颯見くんが立ち止まった。


「甘酒、もう一回もらおう」


 え、と声を漏らして、顔を向けると、颯見くんは、自分の髪にくしゃりと片手を当てた。


「ずっとあんな所にいたから、寒いでしょ」


 鎮まっていない鼓動が、大きくトクンと音を鳴らした。


「あ、ありがとう」


 そのまま鈴葉ちゃんたちと合流すると思っていたから、不意打ちで心が躍る。


 嬉しく思うなんて厚かましいのに、まだ二人でいられることに胸が高鳴っている。

 颯見くんは、優しい人だから、気を遣ってくれているだけなのに。


 そのまま、進む列に従って、甘酒を受け取った。

 紙コップから伝わる熱が、前よりもじんわりと身体に入り込んでくる。


「熱いから気をつけて」


 落ちてくる声が、優しくて、甘酒から颯見くんに視線を移した。


 甘酒は、すごく熱いはずなのに、紙コップに口をつけて、平気な顔でそれを飲む颯見くん。

 寒いせいなのか、甘酒の熱さのせいなのか、頬が薄らと赤くて、つい、見入ってしまう。

 はらり、と動く髪。白く吐き出される息。目的のない視線。


 その目が、ふと私に向けられて、ばちっと視線が繋がった。

 急に、顔に熱がのぼる。


「あ、あ、」


 意味のない声を出していると、颯見くんが、ははっと笑った。

 主張し続けている鼓動が、大きく動いてリズムを崩す。


「哀咲って、猫舌なんだな」


 ふは、って笑った颯見くんに、胸の奥が音をたてる。

 激しく脈打つ鼓動を聞きながら、甘酒に視線を移して、ふーっと息をかけた。