――神社に集まる人たちの、賑やかな声が、遠くに聞こえる。


 神社の裏の、雑木林のような場所で、走って荒れた息を整えた。 

 薄暗くて、静か。今の私には、それが、心地よく思えた。


 公衆トイレの場所なんて、知らなかったけれど、ちょうど走ってる途中に見つけて通り過ぎた。

 巫女さんに頭も下げた。氷をくれた巫女さんかどうかはわからないけれど。その近くに紙コップを捨てるゴミ袋も置いてあって、捨ててきた。
 

 だからきっと、しばらくしてから戻れば、たぶん疑われることもなく、心配かけることもないと思う。


 だけど、まだ、戻る気になれない。


 ひゅーっと、冷たい風が吹いて、マフラーが揺れる。

 誰もいない、静かな、神社裏。


 そういえば最近は、ひとりでいることが少なくなった。クラスにいれば、倖子ちゃんがいて、たまに大西さんたちも話しかけてくれる。

 颯見くんも、たまにクラスに来る。それは、朝羽くんに会うためだけれど、それでも、私はひとりじゃなくなる。


 憧れていたはずだった。

 友達と賑やかに過ごして、好きな人ができたら、そんな話を友達としてはしゃいだり、告白したり、付き合ったり。キラキラした世界だと思っていた。


 それなのに現実は全く違う。仲良くしてくれる大好きな友達に対して、嫌な感情が渦巻いて止まらない。

 どんどん自分が嫌な人間になっているみたい。