じゃり、と、地面に敷き詰められた小石のすれ合う音が、耳に心地よく響く。



「着いた着いたー。まずは、甘酒いく?」


「うん」



大晦日。


夜の九時なんて、普段は出歩かないから、少し悪いことをしているような、不思議な気分。



神社は賑わっていて、楽しい雰囲気が充満しているみたいで、なんだか、そわそわと落ち着かない。



「雫は大晦日に神社来るの、初めてなんだっけ?」


「うん」



倖子ちゃんも、いつも以上に浮き立っているように見える。



「でもここの神社、同じ学校のやつ、絶対いっぱいいるよ」



だからいつもは違うとこ行ってるんだけど、と倖子ちゃんは呟くように言って笑った。



「そうなんだ」



そう言葉を返しながら、颯見くんも来てたりするのかな、なんて、つい考えてしまった。



「あ!」



突然、驚いたように声を出した倖子ちゃんに視線を向けると、顔をゆがませて、どこか遠くの一点を見つめている。



どうしたんだろう、なんて思って、その視線を辿ろうとする前に、パシッと倖子ちゃんに手をとられた。



不意に引っ張られ、え、と声が漏れる。


でも、倖子ちゃんはそれを気にも留めない様子で、手を引っ張ったまま走って行く。



一瞬、小石につまづいて転びそうになりながら、なんとか倖子ちゃんの後をついて、焚き火を囲む人だかりの中に入った。



倖子ちゃんは、そこまで来て立ち止まって、私の手を離すと、うわー、と悶えるように小さく叫んだ。



急に走ったせいで荒くなった息を整えながら、倖子ちゃんの今の言動の原因を推察してみる。



どこかを見て、逃げるように走ってきたから、もしかしたら、何か怖いものでも見えたのかな。


そんなことを考えると、急に背筋が震えた。



「急にごめん」



倖子ちゃんに謝られて、もし、あっちに変なものがいた、とか言われたらどうしよう、なんて、寒気のするような展開が頭に浮かぶ。



「さっきの、あたしの彼氏なんだよ」



だけど、出された答えは、全く予想はずれで、思わず、え、と声を漏らした。