外の空気は、ひんやり冷たくて、思わず肩を震わせた。



「さっむー。早く行こ」


「うん」



早足で進む倖子ちゃんに、駆け足気味でついていく。



寒さで無言のままだけど、目的地は思っていたよりも近くて、すぐに入口の自動ドアを通り抜けた。



生暖かい空気が身体を包む。

それと同時に、賑やかな声や音楽が混ざって飛んできた。



「あー着いたー。寒かったー」



呟きながらカウンターのような場所へ行く倖子ちゃん。

その後ろを、無言でついていく。



「フリータイムでお願いしまーす」



倖子ちゃんがカウンターの人に言うと、かしこまりました、とマイクを渡された。



「行こう」



どうすればいいかわからずに、倖子ちゃんの後ろについていく。



いろんな音楽が混ざり合った喧噪のなかを、無言のまま、ただひたすらに、進む。



倖子ちゃんが、ひとつのドアの前に立ち止まった。



キィっとそのドアを開けて、中に入る。


ガチャン、とドアが閉まると、今まで聞こえていた音が遮断されて、静かになった。



ふぅ、と息を吐いて、倖子ちゃんがソファーに座る。



「雫も、そっち座りな」



立ったままの私に、倖子ちゃんは、テーブルを挟んだ向かいの椅子へ、顎で誘導した。



それにしたがって座ると、倖子ちゃんは、マイクをコトンとテーブルに置いて、乗り出すように私を見る。



「で、確認できた?」



それを訊かれることは予想していたのに、いざ訊かれると、恥ずかしく感じて、答えることを躊躇してしまう。



「あ、えっと……」



颯見くんが、好き。



そう声に出すことが、こんなに勇気のいることだなんて。



緊張しているわけじゃないのに、言おうとすると、その一歩手前でブレーキがかかる。



「あの……」



だけど、倖子ちゃんには、話したい。

ちゃんと、報告したい。



ほら、言うんだ。



そう自分に言い聞かせて、キュッと拳に力を入れた。