第5章 欲張りな心
じゃり、と、地面に敷き詰められた小石のすれ合う音が、耳に心地よく響く。
「着いた着いたー。まずは、寒いし焚き火にでも当たってく?」
「うん、そうだね」
大晦日。夜の九時なんて、普段は出歩かないから、少し悪いことをしているような、不思議な気分。
神社は賑わっていて、楽しい雰囲気が充満しているみたいで、なんだか、そわそわと落ち着かない。
「雫は大晦日に神社来るの、初めてなんだっけ?」
「うん」
倖子ちゃんも、いつも以上に浮き立っているように見える。
「あたしもいつもは違う神社行くんだよね。ここの神社、同じ学校のやつ絶対いっぱい来るからさ」
「そうなんだ」
そう言葉を返しながら、それじゃあ颯見くんも来てたりするのかな、なんて、つい考えてしまった。
「あ、今颯見も来てたりするのかなとか考えたでしょー」
「えっ」
不意に図星を突かれて顔を向けると、倖子ちゃんは、図星じゃーん、と愉快そうに笑っている。
倖子ちゃんにはすぐ心を読まれてしまう。恥ずかしくなって、頬が熱くなった。
焚き火を囲む人集りの中に入ると、ほんのりと火の温かみが伝わってきて、寒さで縮こまっていた体が緩む。
「次どうする? 甘酒貰ってもういっちょ温まりに行く?」
倖子ちゃんが、手袋に包まれた両手を擦り合わせながら、視線を向けた。
「うん」
頷くと、倖子ちゃんは了承したようにふっと笑う。
「じゃ行こ」
短く言って歩き出した倖子ちゃんの後に続いて、一歩踏み出した瞬間。
「哀咲……?」
耳に届いた声。
もう一歩進もうとした足が、その場に縫い付けられる。
砂利石が音をたてる代わりに、トン、と胸の奥が音を鳴らした。
じゃり、じゃり、と横から近づいてくる気配に、敏感すぎるぐらい心臓が反応してしまう。
「哀咲、だよな?」
急に緊張して、身体中に熱がのぼってくる。なのに、すごく、心は高揚してる。
ゆっくりと、その気配に顔を向けた――。
「やっぱり哀咲だ」
くしゃり、と笑った。
痛いくらいに、心臓が動きを速くする。
どうしてだろう。颯見くんの吐く白い息も、寒さで少し赤らんだ頬も、優しい目も。
吸い寄せられるように、目が見つめてしまって、離せない。
じゃり、と、地面に敷き詰められた小石のすれ合う音が、耳に心地よく響く。
「着いた着いたー。まずは、寒いし焚き火にでも当たってく?」
「うん、そうだね」
大晦日。夜の九時なんて、普段は出歩かないから、少し悪いことをしているような、不思議な気分。
神社は賑わっていて、楽しい雰囲気が充満しているみたいで、なんだか、そわそわと落ち着かない。
「雫は大晦日に神社来るの、初めてなんだっけ?」
「うん」
倖子ちゃんも、いつも以上に浮き立っているように見える。
「あたしもいつもは違う神社行くんだよね。ここの神社、同じ学校のやつ絶対いっぱい来るからさ」
「そうなんだ」
そう言葉を返しながら、それじゃあ颯見くんも来てたりするのかな、なんて、つい考えてしまった。
「あ、今颯見も来てたりするのかなとか考えたでしょー」
「えっ」
不意に図星を突かれて顔を向けると、倖子ちゃんは、図星じゃーん、と愉快そうに笑っている。
倖子ちゃんにはすぐ心を読まれてしまう。恥ずかしくなって、頬が熱くなった。
焚き火を囲む人集りの中に入ると、ほんのりと火の温かみが伝わってきて、寒さで縮こまっていた体が緩む。
「次どうする? 甘酒貰ってもういっちょ温まりに行く?」
倖子ちゃんが、手袋に包まれた両手を擦り合わせながら、視線を向けた。
「うん」
頷くと、倖子ちゃんは了承したようにふっと笑う。
「じゃ行こ」
短く言って歩き出した倖子ちゃんの後に続いて、一歩踏み出した瞬間。
「哀咲……?」
耳に届いた声。
もう一歩進もうとした足が、その場に縫い付けられる。
砂利石が音をたてる代わりに、トン、と胸の奥が音を鳴らした。
じゃり、じゃり、と横から近づいてくる気配に、敏感すぎるぐらい心臓が反応してしまう。
「哀咲、だよな?」
急に緊張して、身体中に熱がのぼってくる。なのに、すごく、心は高揚してる。
ゆっくりと、その気配に顔を向けた――。
「やっぱり哀咲だ」
くしゃり、と笑った。
痛いくらいに、心臓が動きを速くする。
どうしてだろう。颯見くんの吐く白い息も、寒さで少し赤らんだ頬も、優しい目も。
吸い寄せられるように、目が見つめてしまって、離せない。
