消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇


 カフェを出ると、外の空気は、ひんやり冷たくて、思わず肩を震わせた。

 
「さっむー。ちょっとカラオケ行かない?」


「カラオケ?」


「うん。雫からいろいろ話聞きたいしさ」


 倖子ちゃんは、寒さに肩をすくめて歩きながら、そう言ってチラリと私を見た。


「そう、だね」


 何の話か、なんて、すぐにわかった。

 今日、気づいてしまった、颯見くんへの気持ち。そして、鈴葉ちゃんと颯見くんの二人に感じている、このモヤモヤした気持ち。


 自覚したら、もう後戻りができなくなってしまった気がする。

 
 早足で進む倖子ちゃんはもう何も言わない。きっと私の答えを知っている。

 無言のまま、目的地のカラオケに辿り着いて入口の自動ドアを通り抜けた。


「あー着いたー。寒かったー」


 呟きながらカウンターのような場所へ向かう倖子ちゃん。その後ろを、無言でついていく。


「フリータイムでお願いしまーす」


 倖子ちゃんがカウンターの人に言うと、ごゆっくりどうぞ、とマイクを渡された。


「行こう」


 どうすればいいかわからずに、倖子ちゃんの後ろについていく。

 いろんな音楽が混ざり合った喧噪のなかを、無言のまま進んで、部屋に入った。

 
 ガチャン、とドアが閉まると、今まで聞こえていた音が遮断されて、静か。

 ふぅ、と息を吐いて、倖子ちゃんがソファーに座る。


「雫も、そっち座りな」


 言われて、テーブルを挟んだ向かいのソファーに座ると、倖子ちゃんは、マイクをコトンとテーブルに置いて、乗り出すように私を見た。


「で、確認できた?」


 それを訊かれることは予想していたのに、いざ訊かれると、恥ずかしく感じて、答えることを躊躇してしまう。


「あ、えっと……」


 私は颯見くんが、好き。

 そう声に出すことが、こんなに勇気のいることだなんて。

 緊張しているわけじゃないのに、言おうとすると、その一歩手前でブレーキがかかる。


「あの……」


 だけど、倖子ちゃんには、話したい。ちゃんと、報告したい。

 そう思って、キュッと拳に力を入れた。