消極的に一直線。【完】

 言い合う二人の会話に口を挟む隙もなくて、ふと二人の背後で仁王立ちしている朝羽くんと目が合った。

 一応会釈をすると、朝羽くんは頷いて、二人に視線を落とす。


「嵐、鈴葉、サボってないで仕事してくれる?」


 朝羽くんの一声で二人の会話が止んだ。


「嵐は倉庫の補充の続きやって。鈴葉はカウンターね。僕はホール全体やるから」


 厳しく言い放った朝羽くんの声に、はーいと二人が返事する。


「雫ちゃんごめんね、もう少し話したかったんだけど手伝わなきゃ」

「俺も仕事の続きしてくる。ゆっくりしていって」


 鈴葉ちゃんと颯見くんは、私にそう言い残して立ち上がり行ってしまった。


「哀咲さんごめんね、ゆっくりしていって」


 朝羽くんもそう言って離れていき、一人になってしまった。

 倖子ちゃんはまだ戻ってこない。


 カウンターでは、鈴葉ちゃんが、店長さんや黒田のおじさんと呼ばれる人と親しく言葉を交わしながら、置いてある雑誌を綺麗に並べている。


 颯見くんは、カウンターの奥の扉の向こうへ行ってしまったようで、ここからは姿が見えない。


「三人とも働き者だねー。鈴葉ちゃんは、やっぱり将来嵐くんのお嫁さんになるのかなー」


「いやいや黒田さん、鈴葉ちゃんは、うちの和仁の嫁に来てもらいたいねー」

 
「もー黒田のおじさんも店長もやめてよ。私達はそういうのじゃないってば」


 改めて、鈴葉ちゃんと颯見くんと朝羽くんは幼なじみなんだな、と実感する。

 颯見くんと朝羽くんが鈴葉ちゃんを取り合っていることすら親公認の事実なんだ。


 心臓がキュッと締め付けられて、視線を俯けた。なんだか、見ているのが辛かった。