消極的に一直線。【完】

 ◆◇◆◇


 メイクも着替えも終わり、倖子ちゃんと昼ご飯を食べて、少しお喋りをしてから家を出た。


 外はやっぱり寒い。

 今から向かうカフェ――朝羽くんの家は、駅の反対側にあるらしくて、三十分近く歩いて行った。


「あーやっと着いた」


 少し気怠そうに言った倖子ちゃんの視線の先を辿ると、茶色い壁のこじんまりとしたお店があった。


 横に立てかけられている看板には『あさばカフェ』と書かれている。


「マジ寒い。足疲れたし早く入ろ」


 スタスタと先に行く倖子ちゃんに、小走りで後に続く。


 倖子ちゃんがドアを開けると、チリンチリンとドアにくくり付けられている鈴が音を鳴らした。

 それを合図に、いらっしゃいませーと出迎えの声。


 ここに、颯見くんがいるんだ。

 そう思うと、急に緊張して手に汗がにじんだ気がする。

 中に入ると、空気が温かくて、思わず身震いをした。


「どうぞ空いてる席に……ってあれ?」


 戸惑う聞き覚えのある声が聞こえて、その声の主に視線を移した。


「哀咲さんと、寺泉さん……だよね?」


 朝羽くんが、目を大きくしながら、「どうぞ、こっち」と席へ案内してくれた。


 そっかぁ。颯見くんが部活が休みということは、同じサッカー部の朝羽くんも休みなんだ。

 そんな当たり前のことに今さら納得しながら、俯きがちにちらちらと周りを見渡してみる。


 お客さんは、私と倖子ちゃんと、カウンターにおじさんが一人だけ。

 カウンターに座るおじさんは、「店長」と呼ばれる人と親しげに話している。

 働いているのは、朝羽くんと、店長さんらしき人しかいない。


 颯見くん、いないのかな。

 そう思うと、緊張して速まっていた鼓動が落ち着くとともに、気分もなんだか沈んでいく。


「ここまで来て、あいついないとかマジ勘弁」


 倖子ちゃんは気だるげな息を吐いて、「ちょっと朝羽!」と朝羽くんを呼んだ。

 朝羽くんが戸惑ったような足取りで、近づいてくる。


 それを俯きがちに感じていると、タンタンタンと別の軽快な足音が奥から聞こえてきた。