「っ!もっもういいから行こうっ!
どこに行くの!?」
顔の熱さをごまかすように、速歩で改札へ向かった。
そんな私に慌てて藤田くんが追いついた。
「ちょっと待ってよ先輩!」
パシっと手首を捕まれ、何事もなかったかのように手を繋ぎ、リードしてくれた。
「ちょっ!ちょっと!
手なんか繋がなくてもっ!」
「なんで?」
熱のこもった瞳で見つめられ、言葉に詰まった。
「っ…。彼女じゃないじゃない!私。」
「迷子になるかもしれないでしょ?
現にさっき先輩違う方向に勢い良く向かってたし。」
笑った気配がして、それに私はムスッとなる。
「ならないわよ!」
「はいはい。今日は動物園だよ。
先輩動物好きなんだってね?」
動物は好き。
可愛くて癒やされるから。
そして私がないものを持ってるから。
可愛さと野生で生き抜くための強さ。どっちも兼ね備えているから。
誰に聞いたのかそんなのもうわかってた。
だから、動物園の最寄駅につくまでずっと無言だった。
でもその沈黙が嫌じゃないって思い始めてる自分がいて、速攻で帰ると言っていた自分はどこに行ったのか…。