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陽汰はずっと窓の外を眺めている。
何か見えるのだろうか。
あたしはもうすっかり窓際に立つことがなくなってしまった。
見るとしたら、満天の星空くらい。
夜空を見ると落ち着くと言うのは、遠い昔のお父さんの教えだ。
「何か見えるの?」
《空が泣いている》
「ロマンチストなんだね」
あたしが笑うと、怒られてしまった。
空が泣いてる、か。
あたしも考えたことあったな。
「何か飲む?」
陽汰は軽く頷いた。
あたしはお茶を注ぎながら考えた。
このまま、陽汰を置いておくのもいいかも。
あたしだって毎日退屈していた。
話し相手がいれば、少しくらい解消できるハズ。
「お茶はいったよ」
陽汰は立ち飲みしている。
イスを引く音すら怖いらしい。
ここまで一緒に行動して分かったこと、
陽汰は左利きだ。かっこいい。
もう携帯には慣れたようで、左手だけで文字を打つ姿は様になっている。
陽汰は俗にいう”美形”の類に入ると思う。
最もあたしは、陽汰の顔じゃなくて瞳に惹かれたんだけど。
吸い込まれるような青。
くりくりと丸い瞳。
「陽汰の目って天然?」
気がつけばそんなことを聞いていた。
自分の愚かさに気が抜ける。
デリカシーがなさすぎて泣けてくるな・・・。
陽汰は首を縦に振った。
《イギリスと日本のハーフ。》
なにそれ、もっとかっこいい。
だからこんな顔が整ってるんだ。
納得納得。
「両親が喧嘩ばかりって言ってたけど・・・何かあったの?」
《二人とも気が合ってないんだ。お父さんは酒癖が凄いし、お母さんは放浪癖と金の無駄遣いが凄い。》
それは陽汰も苦労してるんだろうなぁ。
ご苦労様です。
心の中で手を合わせると食器を片付ける。
「疲れてるでしょ?少し寝たら?」
陽汰が首を横にふった。
寝るのがいやなの?
《少しの物音で起きちゃうから、よく眠れないんだ。》
なるほど。
眠りが浅いんだね。
「陽汰、ここに住まない?帰るのも嫌でしょ?」
驚いた顔をする陽汰。
大げさだなぁ。
《いいの?》
「もちろん。」
陽汰は嬉しそうに笑った。
「じゃあ決まりだね。明日必要なもの買いにいってくるよ」
《買いにいくの?》
「取りに戻るのも嫌でしょ。あたし一人でいってくるから留守番お願いね」
陽汰は迷った後、ゆっくり頷いた。
