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そして、勝負の日はやってきた。


二度目のチャイムが鳴る。


「約束どおりきたぜ」


「・・・お父さん、話があります」


「あ?」


お父さんは目を鋭くする。


リビングには陽汰が座っている。


このドアを開けたら勝負がはじまる。


「あたしたち、実は付き合っているんです」


「・・・は?付き合ってるだと?」


「はい。どうか、認めていただけませんか」


「認めるわけないだろ。コイツは俺たちの所有物なんだぞ?」


所有物って、酷い言い方。


でも、まだ折れる訳にはいかない。


お父さんを納得させなきゃ。


「どうか許してください!あたし、本当に陽汰の事が好きなんです!」


我ながら演技がうまいとおもう。


お父さんは酒瓶を片手に見下ろしてくる。


「・・・そうかよ。あー、俺の負けだ!」


「え・・・?」


「勝手にしろよ、お前らが結婚しようが何しようが俺にはもう関係ねぇ」


言い方はキツいが諦めの念がこもってる。


よかった。


陽汰と顔を見合わせて笑った。


「・・・じゃ、俺もうこねぇから。」


背を向けて颯爽と家を出て行くお父さん。


よかった。成功したみたい・・・!


「やったね、陽汰・・・!」


陽汰はあたしに笑いかけた。


だけど、どこか泣きそうで・・・



あたし、それが気がかりなんだよなぁ・・・