ドアの覗き口から外を見る。


・・・見たことない男の人。


明らかに怖そう。


「・・・どちらさまでしょうか?」


念のためチェーンをつける。


ドアから覗くとポケットに手を入れた男性が立っていた。


「ここに陽汰いるだろ」


低い声でそう言い放った男性。


・・・陽汰の、お父さん・・・?


「し、知りませんそんな人!」


あたしははぐらかそうとするけど、どうやら許してはくれなさそうだ。


陽汰を守らなきゃ・・・!


「しらばっくれんなよ。もう分かってんだ、よ!」


チェーンに手をかけて力をこめるお父さん。


固く繋がれた鎖は、その人の手によってあっけなく壊れてしまった。



あたしを押しのけてリビングへ進んでいく彼。


「おい、帰るぞガキ。」


ふるふると首を横に振る陽汰。


腕を引っ張るお父さん。


見てられなくなって、あたしは陽汰をかばうように前に出た。


「チッ、どけよ。」


「嫌です!陽汰はもうあたしの家族です」


「なに戯言言ってんだてめぇ。陽汰はもう俺たちから逃げられないんだよ」


なんて乱暴な人なの。


話してもダメだ、と思った。


じゃあ脅すしかない。


子供が大人に口げんかで敵うはずがない。


「どうしても陽汰を連れて行くというなら、今すぐにでも貴方を刺します。」


「はっ。んなこたぁ出来んのかよ」


「出来ます」


あたしが真顔で言うと、男は玄関に向かって歩き出した。


でも最後に振り返って、


「また来るからな」


なんて言って帰っていった。


・・・また来るって。


もう、こないで欲しいのに。