「だから生で聴けるなんて、もう夢みたいだよ…………」
思わずほう、とため息をつく。
本当に、まだまだ夢の中にいるみたいで心がふわふわしてる。
いつも画面の奥に居る湊くんが、今こうして肩を並べて、私の話を聞いてくれている。
私の為だけに、頷いてくれる。私の為だけに、笑ってくれている。
それが、どんなに嬉しいか。
「なんか、湊くんが目の前に居て、その声で私に言葉をくれるのが、すっごい嬉しいんだ。実はそれをちゃんと伝えたくて、湊くんを探してたんだ」
「──そんなことが、嬉しいんですか?」
「嬉しいよ。湊くんみたいな有名人には……分からないかもしれないけど私には……」
「分かりますよ」
私の言葉を遮るように、湊くんはそう強く言った。
「──すごく、分かりますよ。だって俺も……菜花先輩とこうして話してるのが、夢みたいだって思うから………」
「え…………っ?」
思いもよらない湊くんの言葉に、心臓が跳ねる。
「遠くから、見詰められたらそれでよかったんです。俺の気持ちを押し付けたい訳じゃなかったし。──でも…今朝先輩を見かけたら……もう高望みが止まらなくて、もっと近くに行きたいって欲張りになっちゃって……」
そう言って笑った彼の白い頬が少し紅く見えるのは、夕日のせいかそれとも
…………私と同じ理由だろうか。
「…………………抑えなくていいよ」
「えっ………?」
「欲張り、して…?」
自分で言って、茹でたタコみたいに頬が一気に紅潮したのが分かった。
湊くんがどんな顔をしているのか、なんとなく確かめられない…。



