「わかんないけど、きっと空は同じだから。空に歌ってたら届くんじゃないかな。───なんて……我ながらロマンチストみたいで気味悪い発想ですけど」
「そんなことないよ。素敵だと思う」
「そんな見え見えなお世話、嬉しくないですよ」
「本音だよ?だって……私よく分かったもん。湊くんが、どうしてあんな綺麗な詞が書けるのか…」
この涙が証拠だよ、と自らの少し赤く腫れた瞼を指さす。
「………初めて、この歌を聴いた時もね、こんな風に涙が止まらなくなっちゃったんだ。……あの時はそれがどうしてだったのか、よく分からなかったけど……」
────今なら、痛いほどに分かる。
「あの歌は……本当に誰かを想って書いたんだよね。今はもう会えない、愛しい誰かを……」
隣に座った湊くんが、そよ風に紛れて、はっと息を呑んだ音が伝わる。そして目を見開き、私の方を振り返った。
「────いきなりそれに気づいたのは………菜花先輩が初めてだ…」
そう言って彼は、半ば諦めたようにぎこちなく笑った。



