そんな歌詞が耳に飛び込んで来て、
思わず息が止まりそうになる。
何度も、何度も聴いた声なのに、全身の力が抜けるほど心を奪われる。
「────…………っ」
どうしようもないほど、涙が溢れ出す。
初めてこの歌を聴いた時もそうだった。
一途に誰かを思うような歌詞に、誰もがまっすぐな純愛歌だと評価したが、私はそれだけだとは思えなかった。
湊くんがこの歌に込めたメッセージは、それだけじゃないと思えてならなかった。
だからこそ涙が、止まらなかった。
「───菜花…先輩……?」
不意に名前を呼ばれて顔を上げれば、湊くんが困ったような顔をして立っていた。
「湊くん………」
「なんか、あったんですか………?」
「…………違うよ」
慌てて涙をセーターの袖で拭おうとすると、湊くんはそれを制するように自身のポケットからハンドタオルを差し出した。
「………ありがとう…」
「取り敢えず、座りません?」
そうぎこちない笑顔で促され、私は言われた通りに屋上に置かれたベンチに腰をおろした。



