湊くんが同じ高校に通うことを知ったのは、湊くんの入学式の日。
昇降口に張り出されたクラス発表の表に、”高梨 湊”の名前を見つけた新入生の女子生徒が大騒ぎした為に、噂はすぐに広まった。
他の子達は湊くんを見に1年生の教室を覗きに行ったりしていたけれど、私はどうしても行けなかった。
だって、近づけば近づくほど、存在の遠さを思い知らされてしまうから。
だけど、本当は……。そうやって言い訳して、傷つくことから逃げてきただけなのかもしれない。
それに比べて、湊くんは………。
屋上へと続く階段を登り終え、上がった呼吸を調えながらドアノブに手を掛けた。
その時…………。
「…………この声……」
聞き間違えるはずは、なかった。
だって、何度も何度も聴いた声。
その透き通るような歌声。
思わず足を止めた。



