しかし周りは思っただろう。
かわいい… と。

「まあまあ、そんなに怒るなよ。
今日は新入生代表の挨拶なんだろう?笑っ
て行こうじゃないか。」

「笑えません!」

そんなことを言っているうちに校舎の入り
口にまで来てしまった。

「私はこれから打ち合わせのために生徒会
室に行きます。お兄様はこれからどうなさ
れますか?」

「そうだな、俺は副生徒会長として
入学式の挨拶について理事長室に行って
くるよ。」

「わかりました。
お兄様、それではこれで失礼します。」

杏李は美しくお辞儀をする。
そして、歩き出そうとした時…

「杏李」

呼び止められ、頰に手をあてられる。
しかし、そのあてた手はとても暖かいもの
だ。

そして、ぎろっと杏李に目をつけていた男子
達を冷たい目で睨む。

「お兄様…?」

そしてまた杏李を優しい目で見つめる。
その様子は、異世界のお姫様と王子様のよ
うな美しさだった。

「いや、なんでもないんだ。
挨拶、頑張れよ。」

そして杏李は嬉しそうに

「はい!頑張ります。」

と、嬉しそうに歩いて行った。

その様子を見て兄も理事長室へ向かう。

(まったく。うちの妹はすぐにこうなるのだ
から…)