ゾクリ、と、全ての意識がその手首に集中する。 触られてるのは手首だけなのに、昨日触られた気持ち悪さを思い出して足が震えた。 「ね?僕とデートしようよ」 「…、やめ…」 あぁ、ダメだ。 もう声すらまともに出ない。 泣きそうになるのを必死で抑えながら、チラッと大志が座っている席を見ようと顔を向ける。 が、それよりも先に。 「い、たたた…っ!」 藤田さんの悲痛な声が聞こえたと同時に、掴まれた手首が解放された。 「人の女に何してんの?おっさん」 そして聞こえた、大好きな人の声。