気持ちが悪い。 それなのに、私は体を動かせなかった。 レジにいる松永くんからは死角で見えないように、テーブルの影から手が伸びている。 分かってるんだ。バレないと分かっていてやっている。 それが分かってるのに。頭では今の状況を理解できているのに、どうしても体が動かない。 気持ち悪い。吐きそうだ。 ─────カランカラン、 「…っ!」 そんな時、お店の扉が開く音がした。 ハッとして、咄嗟にテーブルの上のお水入りのコップをひっくり返す。