歓喜

人、人、人。
人で塗れた街の中を、私は昂りを抑えながら歩いていた。
「治りますよ、貴方の病気」
望んでいた言葉が頭の中でぐるぐると混ざって弾けた。
まさかあの念願が叶うとは思わなくて、思わず鼻歌を歌いそうになるが必死に食い止める。ああ、今日はなんて幸せな日なのだろうなんて思いながら足を進めた。
今日の長い検査のせいで日は少しだけ傾いていて、それでも明るい光を地に照りつけている。私は静かに、だが一つ一つを噛みしめるように目的地への道を歩いた。

ごった返した街から5分、少し寂れた商店街の端にその店はあった。
パンケーキとコーヒーが美味しくて穴場なので、半年ほど前から通っているが、何回訪れてもその味は変わらない。今日もそれらを求めて来た私の熱い心を落ち着かせるかの様に、店のモスグリーンの看板は私を出迎えた。