高校1年生の秋。
「杏花、ごめんね」
家族で食べる、久々の夕食時間。
おいしいね、なんて会話よりも先に言われたママのその言葉なんて、もう聞き飽きた。
「いいよ、私は大丈夫」
どうせ私が何か言ったところで、どうにもならないでしょう?
親の転勤なんて。

昔から転勤の多い両親だった。
長くても、同じところには2年くらい。
短い時なんか、春に転校してきて、秋にはもう次に、なんてこともあった。
今までに15回は軽く超えてるだろう。
その度に、仕方ないことだって、割り切ってきた。
でも、そんなに私の心は安易じゃない。
仕方ないことだって割り切っても、納得出来ないことだってたくさんあった。
友達とか、好きな人とか。
最初の頃は、別れの度に泣いていた。
離れたくない、って。
けれど、私も大人になったみたい。
今思えば、離れ離れになった後に連絡取った人なんてほとんどいない。連絡を取りたいと思った人も。
結局、上辺だけなんだって気付いた頃には、もう友達さえも出来なくなっていた。