「ぐへぇぇぇぇ」




机に突っ伏して雄叫びをあげる。




…いや、悲鳴を…いや、なんの声だ??私の声か!?こんな声出すわけないだろ!いくらなんでもあり得ない!




「伊丹さん!今のは何の雄叫びだい!!?」




「心美様の雄叫びです」




伊丹さんはあっさりと言った。




「なにぃぃぃぃぃ!!?ほんとか伊丹さん!?」




「はい。机に思いっきり倒れこまれた心美様の雄叫びです」




そうか!それでか!なんかお腹が苦しいと思ったら!机め!何の恨みがあって私にこんな仕打ちをするんだ!酷いじゃないか!




「心美様、今日から学校が始まります。無理をせず、何かあればすぐ私に連絡して下さい」




「伊丹さんは心配し過ぎだよ。私は無敵の心美様なんだから!何でもかかって恋だよ!」




「『かかってこい』ですよ。心美様が強いお方なのは存じておりますが、身体は嘘をつきませんから」




そう言うと、伊丹さんは私の体に目をやる。伊丹さんの漆黒の目に見つめられると、全て見透かされてるような感覚になる。




「伊丹さん、そんなに見つめられると私も照れるよ。流石に惚れちゃうよ。伊丹さんが綺麗すぎてヤバいよ。その綺麗な長い黒髪を私にも分けてくれよ。いつも思ってたけど、出かける時に着てるピンクのワンピース似合いすぎだよ!」




「………………」




「伊丹さん、そんなに私の事ばっかり心配してたら寿命が縮むよ。私も伊丹さんが心配だよ。ずっと一緒にいるのに全然顔綺麗だし、私より全然モテるし、この間も何かスカウトされてたし。私から離れていくかもしれないって心配してるよ」




「そんな事絶対あり得ません。心美様は私の心の拠り所ですから。それに、私は心美様の瞳も綺麗な茶髪もその美しい顔も全て大好きです。心美様から言われない限り、一生お側で仕えさせて頂きます」




「……うおっ!びっくりした!ちょっと今伊丹さんからの熱烈なアタックに私だけ次官が留まったぞ!」




「心美様、『時間が止まった』です」




「そ、そうだったのか……」




「心美様、そろそろ朝食をどうぞ。また学校に遅刻してしまいますよ」




「う、うっす……」




伊丹さんは私の反応を楽しんでいるようだ。




さっきからニコニコしてて可愛いじゃないか!ずるいぞ!そして朝食に味噌汁なんて最高じゃないか!流石じゃないか!




味噌汁を啜りながら、私は心底喜びを感じていた。