風と今を抱きしめて……

 事件が起きたのは三日後だった。

 夜になると谷口がやってきた。

 昼間の様子をユウが谷口に伝えている時だった。

 隣の玄関が開く音がし、旦那が帰ってきた事がわかった。

 一時間程すると、隣から物が割れる音と同時に女性の悲鳴が聞こえた。

 ユウと谷口は目で合図をし、谷口は警察に電話をした。


 その間に又、物が倒れる音がし、ユウはベランダから隣の部屋へと渡った。


 部屋の中では真矢がお腹をかばい倒れている。


 その横で男が拳を上げている。

 ユウは迷わず飛び込んだ。


 真矢をかばうように男の前に割り込み、男の拳を腕で交わした。



「なんだ、お前は!」

 怒鳴りながら、真矢を引っ張ろうとする男の腕を、後から入って来た谷口が押さえる。


 警官二人が駆けつけ、男を外へ連れ出した。



 ユウの腕の中で真矢は震えていた。


「もう、大丈夫。心配しなくていい」


 ユウは自然と出た言葉に、自分でも驚いた。