一郎とユウは、近くの喫茶店のテーブルに座っていた。

 窓際の席に二人は座り、白髪混じりの渋いマスターがコーヒーを運んできた。

 コーヒーを口にすると、ユウは唇を痛そうに押さえた。


「俺が殴ったんじゃないぞ! 千秋が殴れと言ったんじゃ」

 一郎は、言った。


「おじさん…… ごめん…… 俺何度も謝らなきゃなって……」


「さっきも言っただろ。私達は君を恨んだりしとらんよ……」


「でも、俺が居なきゃ…… 千秋もエミリだって……」

 ユウは声を詰まらせる。


「何を言っても自分を責めるのか? それならそれでもいい。罪を償うつもりでも構わんから、わたしの頼みを聞いてもらえないだろうか?」


「俺に出来る事なんて……」

 ユウは、下を向いたまま言った。


「どうしても助けたい女性がおるのだよ。どうせ暇なんだろう? 力を貸してくれ……」

 一郎の目は真剣だ。


 その時は一郎に愛人でも居るのだろうと思っていた。



 一郎は、カウンターでコーヒーを飲んでいる、さっきの大柄な男に手招きをした。


 その男は、谷口と名乗ると一郎の横に座り、大きな封筒から女性の写真を見せた。


 詳しい話を谷口から聞き、谷口の用意したアパートへ今すぐ引っ越すように命じられた。