目が覚めた時、ユウは病院のICUのベッドの上だった。

 体が思うように動かず痛みが走った。

 その痛みにすべての事を思い出させた。


 側に居た看護師がユウの意識が戻った事をドクターに伝えている。

 ユウは千秋の名前を叫び看護師を激しく問い詰めた。


 ドクターが近づき、悲しげな目で大きくクビを横に振った。


 ユウは何が起きているのか把握する事が出来ずに、看護師の目を盗んでユウは病院を抜け出した。

 タクシーの運転手に千秋の家の住所を告げると、夢であって欲しいいと祈り続けた。



 タクシーから降りると、目の前の光景に夢で無い事を思い知らされた。


 住宅街にある千秋の家の庭には、黒の服に身を包んだ人達が大勢いた。

 ハンカチで目を抑えている者、中には泣き崩れ支えられている者も居た。


 家の中には千秋とエミリの写真とその前にベビー服が置かれ、白い花でかこまれていた。


 その写真の前に立ちつくしている男が、長谷川一郎、千秋の父親だった。



 以前会った時より一回り小さく見え、肩を落とした姿が悲しみの深さを語っていた。



 ユウは、一郎の背中に近づいた。


「おじさん…… 俺……」

 と言いかけた時、一郎は大きくユウの肩に手をやり、何も言わずにその場を去って行った。

 ユウは、言いようもない大きな罪を背負った事に気が付いた。



 その後の現場検証で、警察官からトラックの運転手が飲酒と薬をやって運手していた事を聞かされた。

 すべての責任はトラックの運転手にあると言う事だった。


 勿論ユウは運転手を憎んだが、それ以上に自分を憎んだ。


 自分が運転しなければ、自分がロスに行かなければ、自分が千秋の親友にならなければ良かったとさえ思ってしまったのだ。