「何?」


「あなた…… ゲイでもオネェでもないわよね?」


 奈緒美は、ユウの目をじっと見て言った。


 一瞬ユウの目が動揺し、奈緒美から目を逸らした。


「いやあねぇいきなり。そんなことある訳ないじゃない」

 ユウは、やけに高い声を張り上げた。


 奈緒美はユウから目を逸らさず、ゆっくりと首を横に振った。


「私にくらい話してくれてもいいんじゃない? 結構協力してきたつもりなんですけど……」



 少しの間、ユウは黙っていた。



「あんたがここに来るって言った時、嫌な予感がしたんだよな。いつから気が付いていた?」


 ユウは、体をソファーの背もたれさせて、チラリと奈緒美を見た。


「社長が初めてユウを連れてきた時、急な入社だったのに旅行の事全く素人だったでしょ? 必至で仕事覚えて、真矢が入社して来た時にはベテランの顔になってた。まるで、真矢を受け入れる為に、あなたが来たようにしか思えなかった。
 あの頃はまだ、それほど女言葉じゃなかったのに、真矢の前になると女言葉になるからびっくりしたわ。ずっと不思議に思っていたけど、今日ここに来て確信したわ。だってあなたの部屋、オネェの部屋じゃないわよ」


「そっかぁ。上手くやって来たつもりだったんだけどね。あんたにはバレていたのか?」

 ユウは、参ったと言う顔をして笑った。


「訳を聞かせてくれない? 勿論、真矢にも誰にも言わないわ」


 ユウは大きくため息をつき、ビールをグイッと飲むと、ゆっくりと話だした。