大輔を乗せた車は、大通りを走っている。

 高層ビルのネオンが遠くに見えた。


「今度、横浜に本社のある大手建設会社が創立五十周年を記念して、社員と家族を旅行に接待するらしい。かなりの人数になると思うが、まだ行先や日程は決まってない。社長が私の古い友人で色々と世話になっておってなぁ。今回もうちでと言ってくれている。
 お前の事は話してあるから、来週早々にでもいくつかプランを持って話に行ってくれんか?」

 一郎が、淡々と仕事の話を始めた。


 仕事の話に、大輔は内心がっかりしていた。

 大輔には気になっている事がいくつもあるのだ……


「はい。早急にプランを考えます。海外の方向も考えておいででしょうか?」


「その辺も考えておるらしいが、大勢になりそうだから、国内と海外と分けたいとも言っておった。後は任せるよ」


「わかりました」


 大輔は大きく息を着くと……

 「あの、お聞きしたいと事が……」


 「真矢との事か?」


 一郎に先に言われ、大輔は面食らった。


「いえ…… あの…… その……」


「なんだ。違うのか、てっきり私はお前が真矢の事を気にしておると思ったんだが」


「ああ…… そうなんですけど……」

 ストレートに言われると、どう答えていいかわからない。


「はっきりしない奴だな! 聞きたいのか?聞きたくないのか?」


「聞きたいです……」

 大輔は、覚悟を決めて言った。


「その前に、娘さんの件申し訳ありませんでした。せっかくのお話ですが僕にはもったいないです」


「その件はいい。初めからお前が梨花と結婚するなど思っとらんよ。」


「では、何故?」


「お前には悪い事をしたが、梨花にもきちんとした大人になって欲しかったんだ。お前や真矢の仕事を見ていれば、何か変わるのではないかと思ってなぁ…… 
 お前にきちんと振られる事も梨花の成長になると思ったんだが…… 」


「私はお役に立てたのでしょうか?」
 
 大輔は複雑な思いで答えた。


「多分な…… お詫びに真矢との事を話すよ……」


 車が『BULLUE』と言う落ち着いた看板の前で止まった。