「支店長、一つだけ聞いてもいいですか?」

「いいけど、なんだ?」

「本当は真矢さんの事好きなんしゃないですか?」


 梨花は、いたずらっぽい目で大輔を見た。



「ええ、い、いや別にそういう訳じゃ…… 彼女は僕の事なんてなんとも思ってないよ。」


 大輔は動揺した表情を見られないよう、窓の外へ目を向けた。



「そうなんですか? 私はてっきり…… でもそれならいいのかな?」


「いいってな何が?」

 大輔は、不穏な声を出した。


「いえ、ただ…… もし好きなら、ちゃんと伝えないと。真矢さんパパと内緒で時々会っているみたいですよ。
 好きじゃないなら関係ないですけどね」



 梨花はそれだけ言うと、向きを変えペロっと舌を出し、軽やかにオフィスの中へと入って行った。



 梨花はオフィスのドアを開け、てきぱきと雑用を片付け始めた。


「梨花さん、OLさん達がシンガポールツアーの話聞きたいって来店するの。よさそうな資料見繕ってくれるかな? おねがい」

 亜由美が忙しそうに、梨花に言った。



「はい。すぐ用意します!」


  梨花の大きな声が、大輔の元へも響き渡った。