~大輔~

「ごめん。直接君に話そうと思っていたんだ。君とは結婚できない。でも俺を見てくれてありがとう……」

 大輔は、一息ついてから話を続けた。


「それから、君が研修で行った事はけして許される事では無い。
 しかし、よく大変な雑用を熟していたと思う。皆の仕事を見て仕事をよく覚えていたし、気を回して行動できるのは観察力が優れているからだと思う。確かに女性だから結婚が幸せと言うのも分かるが、一度仕事と言うものを真剣に考えてみてはどうだろうか? 
 いい仕事が出来ると思うよ。まだ若いんだし可能性はたくさんある。」

 大輔は梨花の目をじっと見た。

 それは、女としでなく上司としての目だ。


「支店長、以外と女性の振り方下手ですね。 なんか、ロスにいた時と変わった感じがします。でもやっぱり素敵な人だと思います。仕事の事良く考えてみます。
 父の力を借りずにやれるのかな?」


 梨花はそう言うと、皆が忙しそうに接客をしている姿に目をやった。


「皆も、始めは正直あまり君に、期待してなかったみたいだけど…… 
 いつの間にか君が社長の娘って事忘れて指導していたんじゃないかな。それに君も高飛車にならないで、研修生らしく指導受けていたじゃないか。俺も以外で驚いたよ」


「私も自分に驚いています。確かにはじめは支店長に認めてもらいたかっただけなのに、見積書の件から、自分がすごく恥ずかしく思えてきたんです。
 いつもの私ならすぐ辞めちゃうと思うんだけど、どうしも最後まで研修してみたくて…… て、いうか最後までやらなきゃ、って…… 
 真矢さん見ているとそんな風に思えてくるんです。不思議な人ですね」


「そうだな……」

 大輔は、少し切ない笑みを浮かべた。


「支店長、本当にお世話になりました」


 梨花は、頭を丁寧に下げると歩き出したが、もう一度大輔に振り向いた。