プライドの高い梨が、花皆に話すのにかなりの勇気が必要だっただろう……

 真矢は、梨花の泣く姿に、自分も素直にならければと思った。


「梨花さん…… 私もあなたに嫉妬していたのよ。気付かなかった? 
 綺麗で愛らしくて、頭もいいし。そして若さが眩しい…… 自分が持ってない物に羨ましく思ったわ。
 だけど、すべて手に入れようなんて思わない。ましてや嫉妬しているなんて思われたくないでしょ? 余裕に見えたなんて私も少しは大人になったのかな?」


 真矢が梨花に笑顔を向けた。 
 
「どういう事だ、梨花、分かるよう説明しなさい」

 一郎が険しい顔を梨花に向けた。



「梨花さん、仕事してみてどうだった?」

 また、真矢が一郎の言葉を無視した。



「私、初めて仕事したんです。仕事になんて興味も無くて…… だけど、お客様が喜んで下さるのにワクワクして来たんです。お客様の為に皆さんが色々考えている姿に感動してきちゃって。
 なのに、私お客様に迷惑かけるような事してしまって…… このまま黙って研修終わりにしてしまったら…… 私一生後悔する気がして……」



「この仕事の中で一番大切な事に気が付いたみたいね。一か月の研修は合格ね」

 真矢が大輔を見た。

 大輔も肯いた。


「研修は無事に終了。『合格』は僕のセリフだけどな」

 大輔は、少し面白くなさそうな顔をしていた。



「支店長、もうし訳ありませんでした。ありがとうございました」


 梨花が深々と頭を下げた。


「なんだかよく分からんが、梨花が皆に迷惑かけてしまったようだが……」

 一郎が困ったような顔をしている。


「いいんですよ『研修合格』ですから」

 真矢が、一郎を安心させるかのように言った。


「こんな私じゃ、ダメですね」

 梨花が下を向いた。


「ここで言う事ではないと思うが、大輔君から例の件、正式に断りの返事をもらったぞ」

 一郎が梨花の顔を見た。


 梨花は、大輔の顔を確認するかのように見た。


「すまない」

 大輔は梨花を見て言った。


 大輔の表情に、梨花はミーティングルームを飛び出した。


 大輔が直ぐに後を追ったて出ていった。